第8回目のゲストは、
伊藤 香織(いとう かおり)さん
地元の高校を卒業後、秋田市の日本赤十字秋田短期大学に進学し介護福祉士の資格を取得。
卒業後、介護の現場で勤めておられます。
今回は、当研究所の研究員(インターン生)ニシヅカさんと一緒に、お話をおうかがいしました。
第1話では、中学生の頃から決めた介護の道に進む学生時代の想いや、地元を離れ戻った経緯、働き始めて感じた介護の仕事の難しさなどについてお伺いしました。
まだお読みでない方はコチラから
第2話は、仕事やストレスのリフレッシュの方法、介護の仕事の魅力ややりがい、香織さんの新たな人生の決断について迫ります。
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ニシヅカ)これまでは、仕事について伺ってきましたが、次はプライベートについての質問です。ストレスの発散やリフレッシュはどのようにされてますか。
香織さん)どちらかというとインドア派ですので、家にこもってアクセサリーを作るなどしてリフレッシュしています。今日、着けているイヤリングも実は自分で作ったものです。アクセサリーなどの小物を作ることが好きですから、この時間が一番のリフレッシュになります。無になれる時間というか、好きなこと以外を考えなくていい時間がリフレッシュになってると思います。
ニシヅカ)好きなこと以外、何も考えない時間は確かに必要だなと思いました。
香織さん)休日に仕事の段取りなどを考えてしまうと、リフレッシュしきれないこともあると思います。好きなことや趣味など、ただ黙々と集中している時間は仕事のことを忘れることができるのでリフレッシュになります。1日で1個アクセサリーを作っただけでもすごく達成感がありますし、わたしにとってはこの時間がリフレッシュタイムです。
ニシヅカさんは何をしてる時間が楽しいですか。
ニシヅカ)これまで飲むこと好きだったコーヒーですが、コロナ禍で自宅に居ることが多くなったため自分でコーヒーを煎れることも好きになりました。その他にもコロナ禍ですが一日中家に居るのが苦手なため散歩出かけるなどして過ごす時間を楽しんでいます。
所長)なるほど。リフレッシュの方法もそれぞれですね。
再び仕事のことをお聞きかせください。今後、介護の現場で働きたいと考えておられる方のため、働く中で感じられる楽しさや魅力を教えていただけますか。
香織さん)介護の仕事は成果が目に見えづらいといった部分もありますが、日々、利用者さんに寄り添っていると「私に心を開いてくれた!」と感じられる瞬間があります。また、「今日は伊藤さん来ていないのか」と、自分を求める声が聞けたときはとても嬉しく、大変さや切ない想いも一瞬で吹き飛びます。このように人とのつながりをダイレクトに感じて働けることが魅力だと思います。
ニシヅカ)大変なときも、利用者さんから信頼を得られたことが自分のモチベーションにつながる点は魅力ある仕事だと思いました。
所長)香織さんは中学校の頃から介護の仕事を目指されていましたが、働くことや仕事に対する姿勢で、働く前と働いてからで変わった部分もしくは変わらない部分はありますか。
香織さん)介護の仕事は、給料は高くないですし、正職員になることも大変です。現在は、正職員として働けていますが、前職までは臨時職員でしたので、正職員と比べ給料が少なく、生活がきつかった時期もありました。ですが、それ以上に得るものが多かったです。人とのつながりや関係性を築く中で得られた価値観は自分にとって大きな財産と思っています。ですから、関係性を築くことにやりがいを感じますし、どんな仕事であってもそれは大事だと思います。
また、介護の仕事では、利用者さんとの関係性、同僚との関係性、利用者さんのご家族など、多く人と関わりますので関係性を築くことは働きだして意識していることです。利用者さんの生き方は一人ひとり違いますから、様々な人生に触れることができることも働きだして感じられた部分です。
ニシヅカ)触れるというのは具体的にはどういったことでしょうか。
香織さん)介護する中で、利用者さんの今の状況だけを見ていては良いケアができないと思っています。その方がこれまでどのような仕事をされていたか、どのような生活を送っておられたか、何人お子さんがいらっしゃるなど、背景を知ることで良いケアができます。
自分がケアされる側だとすると、知らない相手にいきなり心を許すことはまずないですよね。ニシヅカさんがケアされる側だとすれば、相手に自分のことを知ってほしいと思いませんか。
ニシヅカ)そう思います。。
香織さん)何も知らないでケアされるより、自分という人を知ってケアしてもらった方が嬉しいと思います。ですから利用者さんの今だけを見ず、背景も知ることは凄く大事だと思います。
ニシヅカ)様々な人生に触れるということは、背景を知るということですね。
香織さんは利用者さんの様々な人生に触れてこられたと思いますが、その中で描くご自身の将来のイメージどんなものですか。
香織さん)ワクワクを感じながら生きていきたいです。何事にも楽しみを持ちたいですね。
コロナ禍で、利用者さんは外出もままならならず、ご家族とも思うように会えないという状況です。いかに私たち職員が日々の生活の中で楽しみをつくれるかが大事だなって思います。利用者さんが楽しみにされているものを観察しながら知って、ケアに生かすことも大事だと思います。
楽しみが生きる原動力にもなると思いますから、自分も楽しみを持って生きていきたいです。
所長)体が不自由になっても一人の人ですから、楽しみは大切ですね。
香織さんはこれから成し遂げたいことなどはありますか。
香織さん)これまで介護の仕事について話してきましたが、実は今年度で介護の仕事からは離れ、別の仕事で働く予定です。
介護の仕事が嫌だからと辞めるというわけではなく、それ以上にやってみたいことができたので、そちらに挑戦するため退職を決意しました。
ニシヅカ)その挑戦はどのようなことですか。
香織さん)羽後町でカフェと民宿をされている『阿専』で働く予定です。
所長)かなり振り切った決断という印象ですが、決断に至る心境の変化を教えていただけますか。
香織さん)実はこれまでも、仕事の休みの日にお手伝いをしていました。お客さまとコミュニケーションの中でファンができ、毎年宿泊くださるお客さまができたり、カフェに来ることを楽しみにしてくださるお客さまができたり、介護の仕事とはまた違った人とのつながりが魅力的で「こういうカタチの人とのつながりも素敵だな」と思ったからです。
また、介護職の経験しかなかったため新鮮さを感じたこともきっかけのひとつです。これまで接客業は自分に向いてないと思っていましたが、いざやってみると意外と楽しく落ち着いて仕事ができました。ですが、決め手はやはり、これでまとは違った人との繋がりを楽しく感じたことでした。
所長)思い切った決断だからこそ不安な面もあったと思いますが実際いかがでしたか。
香織さん)やはり不安は大きかったです。無いと言ったら嘘になるほど今も不安があります。介護の仕事を続ければ金銭面では困らずに安定した生活を送れますが、阿専で働くことでどの程度の給料をいただけるか不安もありました。ですが、不安の中、不安以上にやりたいことをやりたい気持ちが強く、転職を決意するまでは相当に悩みました。
副業が認められる流れに時代が変化してきましたので介護の仕事との両立も考えましたが、現在の仕事は早番や夜勤もあるシフト制の仕事のため、カフェが忙しい土日に自分だけ休まなければならなくなること、介護の仕事ではコロナの感染対策を万全にする必要がありますが、宿泊される方には県外からお越しになる方もいらっしゃることなど、現実的に考えると両立は難しいと思いました。やりたいことを先延ばしにしている間に、タイミングを逃して後悔することだけは避けたかったですし、こういったことを考えること自体に『やりたいことをやるタイミング』だと捉え、思い切って決断しました。
所長)人生の舵を別の進路に切られたのですね。
香織さん)そうです。今回は相当な覚悟を持って進路変更しました。というのも、実は石橋を叩いて叩いて叩き壊すタイプなんです。考え過ぎて橋を壊し動けない場合や、橋を渡ることを恐れ諦めてしまう場合も多く、自分の中で「こうあるべき」「こうしなければならない」と、自分をがんじがらめにしていたのですが、出会いの中でこのような部分に少しずつ変化があり「もう少し自分を開放してあげてもいいのかな」と思えるようになりました。
所長)なるほど。
一昔前は「一つの仕事を続けるべき」という考えが根強い時代でした。その考え方は間違いではありませんが、終身雇用という慣例や雇用する側の意識も変化し、雇用される側も多様な選択ができる時代に変化していますからね。
香織さん)同じ仕事を長年続けるのが望ましいとされている時代で育ってきましたから、変化する時代の流れとともに、自分自身の考え方も変化した部分もあると思います。
所長)地域の中でも様々な動きがありますものね。移住してくる人がいたり、新しくお店がオープンしたり、人生の舵を切られた方が周りに多かったことも、香織さんの決断に影響しているのでないでしょうか。
香織さん)その影響も大きいと思います。数年前までは、起業した人を見ても感じることは少なく「町にこういう人がいるんだな」と思うくらいで、自分が関わるほどの興味はありませんでした。振り返るときっかけは、町に移住してきた人がゲストハウスを作りたいと動いていたことに興味を持ったことでしょうか。移住してまで羽後町のことを盛り上げたいと思っている人を知り「自分も何かしたい」という気持ちに変化していきました。
興味は好奇心となり、好奇心から阿専のお手伝いが始まり、お手伝いしたことで好奇心はさらに膨らんでいきました。
ニシヅカ)不安もある中、ご自身の体験から今の決断に至り、決断を前向きに捉えておられるお話はとても魅力的です。
香織さん)不安だけど、自分が選んだ道を自分で正解にしていくしかないと思いましたし、自分の決断を信じて努力するしかないと思いました。
これは、どんな仕事にも、どんな人にも当てはまると思います。もちろんニシヅカさんにも。
自分が選んだ道を正解とする努力が必要だと思います。
所長)香織さんは中学校の頃、自分の就きたい職業を見つけられましたが、若い世代にはやりたいことを見つけようとしても見つからないと悩んでいる人も多いと思います。
ご自分の経験から何かアドバイスをお願いします。
香織さん)興味が湧いたり、面白いと感じたりしたことは実際に体験してみることが大事だと思います。わたし自身、今回の決断に至る中で「まずやってみること」の大切さを学びましました。「若い間に色々な経験した方が良い」と言われますが、その意味の本質も理解できました。年を重ねても経験できることはありますが、若い頃と比べ背負うものも多く、身軽さで比べると、若い頃の方が動きやすいと思います。体力的に無理も利きますから、若い間にたくさんの経験を積み重ねると良いと思います。
ニシヅカ)参考にしていきたいと思います。
では、最後の質問です。香織さんが一番卒業したい「べき」は何でしょうか。
そして今、一番興味のあることも教えて下さい。
香織さん)まず「べき」の方は「仕事は長く続けるべき」「人に対してこう接するべき」など、ですね。まだ、自分の中に残ってる「べき」が、頑固さとして根を張りたくさん残っています。
ですが今は敢えてその「べき」を、一度に手放そうと考えておらず、状況に応じて柔軟に手放していけば良いと思っています。
「べき」とは少しズレた話ですが「自分にはできない」と、限界を自分で決めてたところもあったので、自分で自分の幅や奥行きを狭めないよう「やりたいことをやってもいいよ」という気持ちを持ちたいです。
そして今、興味があることは動画編集です。誰か教えてくれる人がいないかなと思っているところです。
所長)わたしも動画編集をしますが、元々やってた訳ではないんですよ。今はYouTubeやネット検索で学べる部分もあり、誰に教わることもなく独学しています。
香織さん)何でもやってみないと、できるかできないか分からないものですよね。
所長)やってみると難しい部分も多いですが、一方で面白さも多く、完成後にやりがいを感じたりします。
西塚さんはこのインターン業務で記事を書いててどうですか。取材の面白さはどこでしょうか。
ニシヅカ)取材はこのインターンで初めて経験しますがとても面白いです。インタビューすることは特に面白いと感じています。
記事作成の前の文字起こしでは、さらっとお話された言葉もキーワードに思えてきたりします。編集の過程では、わたしというフィルターを通して論理的にまとめる部分に難しさはありますが、相手が本当に伝えたかったことは何かを考えることも面白いです。
香織さん)楽しんでますね。
ニシヅカさんにとって、このインタビューも1つの挑戦だと思いますが、今日のインタビューで感じたことはありますか。
ニシヅカ)最初は緊張していましたが、香織さんの素敵な雰囲気で段々落ち着いて話すことができました。答えの難しい質問もしてしまいましたが、名言のような言葉もお伺いするこができ、充実した時間でした。
香織さん)とても嬉しい言葉をありがとうございます。
所長)本日は、ありがとうございました。
ニシヅカ)ありがとうございました。
取材日:2022.03.08
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香織さん、お忙しい中、取材協力いただきありがとうございました。
今後、香織さんが働かれる「阿専」の情報は、以下から確認できます。
【所長のあとがき】
今回のお話は、興味は湧けばやってみるということがポイントでした。ですが、新しいことに挑戦する怖さや、先が見えない不安もあって当然だと思います。そういう不安を少しでも和らげるための、事前準備や予備情報として、このインタビュー記事を読んでもらえばいいですし「大人も悩むんだ」「社会に出てから学ぶことの方が多い」「失敗の積み重ねに成功がある」とか「価値観を広げることが大事」などを知ることで心の準備ができるとおもます。
そして、ネガティブに捉えるかポジティブに捉えるかで変わることもあります。
わたしは、当法人が実施している取材型インターンに参加することにも、参加者は自分の中のハードルを超え挑戦していると思っています。
たくさん挑戦していく中の1つとして…
取材型インターンシップご興味がある方は、以下からご連絡ください。
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