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所長の部屋『ゲスト:伊藤香織さん』 第1話


第8回目のゲストは、


伊藤 香織(いとう かおり)さん


地元の高校を卒業後、秋田市の日本赤十字秋田短期大学に進学し介護福祉士の資格を取得。

卒業後は介護の現場で勤めておられます。


今回は、当研究所の研究員(インターン生)ニシヅカと一緒に、お話をおうかがいしました。


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所長)それでは、まず簡単にご経歴の紹介をお願いします。


香織さん)秋田市のある短大を卒業後、秋田市内の介護施設で1年ほど働いたのち羽後町に戻り、現在も介護の仕事で働いています。


所長)羽後中(羽後町立羽後中学校)が出身校だと伺っていましたが、高校はどちらに進学されましたか。


香織さん)湯沢北高(秋田県立湯沢北高等学校(平成23年4月、湯沢商工高等学校と統合、し、湯沢翔北高校なる))に進学しました。当時は女子校でした。


所長)他の高校も選択できたと思うのですが、なぜ湯沢北高を選んだのですか。


香織さん)わたしは、早い段階で就きたい職業を決めていました。

中学生のとき、母方の祖父が寝たきりになったため、祖母が介護をしていました。小柄な祖母が懸命に介護する姿を見ても、何もできない自分に悔しさを感じ、将来は介護職に就きたいと思うようになりました。

当時の湯沢北高にはヘルパーの資格を取れる学科があり、そこへの進路を志望していましたが、担任の先生から「今後、やりたいことが増えたり変わったりすることもあるので、今から絞込み過ぎないのもひとつの方法だよ」とアドバイスを受け普通科へ進学することにしました。


所長)普通科に志望を切り替えたということは、他校への進学も選択肢として広げたのですか。


香織さん)選択肢を広げ検討しましたが、湯沢北高に進学する友達が多かったこともあり、最終的に湯沢北高に決めました。



所長)中学校や高校で部活は何をされていましたか。


香織さん)スポーツがあまり得意ではなかったこともありましたし、学校と家が遠く離れていたため帰宅時間が遅くなることに心配もあり、中学では家庭部、高校ではJRC部というボランティア活動をする部活と放送部を掛け持ちしていました。


所長)高校生活は楽しかったですか。


香織さん)女子校ならではの楽しさがあり充実していました。


所長)高校卒業後は、日赤短大(日本赤十字秋田短期大学)に進学されたそうですが、高校進学後も中学生のときに描いた進路と別の進路とで迷うことはなかったですか。


香織さん)進路選択で迷うことはなかったです。


所長)介護以外の仕事で興味のあるものはなかったですか。


香織さん)当時、全く迷いはありませんでした。


所長)そういったケースも珍しいですね。他に目移りすることも多いのですが…

日赤短大ということは、大学在学中に介護の資格を取得されたということですか。


香織さん)はい、介護福祉士の資格を取得しました。


所長)短大ですと、入学後まもなく就職活動を意識しなければならないですよね。


香織さん)はい、介護の現場は常に人材不足ですから、求人もたくさんあり就職先で悩みましたが、わたしは比較的、就職先が決まるのが遅い方でした。最後の実習先で産休に入られる職員の方がいらして、実習先の方から「良ければココで働いてくれないか」というお話をいただき、秋田市にある特別養護老人ホームに就職しました。

ですが当時は、正規の職員として勤めることができる施設はほとんどありませんでしたので、臨時職員としての採用でした。ですから給料が少なく、家賃、車の維持費、食費などで、生活は苦しかったです。


所長)介護職は仕事の幅も広く、要介護者のレベルによって施設も様々ありますが、特別養護老人ホームはハードな方ですから仕事も大変ですよね。

そして実家を離れると生活面でも大変になりますからね…


香織さん)当時、実家を離れて暮らしたい気持ちがあり、秋田市での暮らしを選択しましたが、実際に暮らしてみると想像通りにいかないことも多かったです。

その後、苦しい生活を過ごしている状況を察した両親から「地元の介護施設でも職員を募集しているので応募だけでもしてみてはどうか」と心配され、乗り気ではなかったのですが、応募したところ採用の連絡をいただけました。ですがやはり、自分から進んで応募した訳でなかったこともあり、採用連絡をいただいてからも悩んでいました。両親の「近くに居てほしい」という気持ちも汲み取り、最終的には地元に帰る決断をして、ショートステイとデイサービスをおこなう介護施設に勤めました。


ニシヅカ)話を戻してしまいますが、進学や就職を機に都市部にいこうと考えたことはありませんでしたか。都市部に憧れを持つ人も少なくありませんが…


香織さん)地方出身者ですからもちろん都市部への憧れはありました。ですが、性格的に都会暮らしは向かないと思っていました。加えて両親に「出て欲しく」ないという意向がありました。短大に進学が決まったときも、幼馴染と一緒に暮らすということで、ようやく秋田市で暮らすことを承諾してもらえたくらい過保護でした。今振り返ると一度は都会で暮らす経験もしておけば良かったと思います。


ニシヅカ)羽後町に帰ってきてほしいという親御さんの気持ちを知ったこと以外で、地元に戻ると決めた理由はありますか。


香織さん)やはり、地元が好きだったことが大きいです。友達の多くも羽後町で暮らしていましたので、安心感が得られる暮らしを当時は想像しました。実はもう一つ「戻ってきたら車を買ってあげる」という両親の言葉に踊らされた部分もあります(笑)


ニシヅカ)ご自身の性格は都会には向いてないとお話されていましたが、どのような性格だと思っていますか。


香織さん)のびのびとしていたいタイプで、急かされたくない性格ですから、多くの人が行きかう都会での暮らしに上手く適応できるか不安もあり、都会暮らしは合わないと思っています。どちらかというと、自然が豊かな風景のある暮らしが合っていると思います。夕焼けが綺麗に見えるところ、水田や写り込む風景など、何気なく目に映る景色が好きです。


ニシヅカ)伊藤さんのおっしゃる”何気なく目に映る景色”というのは分かる気がします。

ぜひ、羽後町の魅力を教えて下さい。


香織さん)トーク力を試されてそうですね(笑)

まず、自然が豊かなところ、住む人もみんな優しいなと思いますし、そばやスイカが有名で、わたしはスイカが大好きです(笑)


所長)人が優しいということでしたが、日常的にあまり意識しない部分でもあったりしますよね。

逆に都市部から来られた人には…


香織さん)面倒くさいと思う人もいるのでしょうね…



所長)都市部では、あまり感じることがない人付き合いの距離感ですからね…

どちらの暮らしも一長一短あると思います。

暮らしの中で感じられる居心地の良さはどのようなところですか。


香織さん)わたしが住んでいる地区は限界集落に近い状況で、一人暮らしの高齢者の方もいます。そういう方を地域で支えることが、昔からずっと続いていています。

例えば、母は町部で働いていますから、一人暮らしの高齢者の方から買い物や送迎を頼まれる事が多く「通り道だからいいよ」と快く応じています。その姿を見てわたし自身「このような関係性が素敵だな」と思います。頼める頼られるという間柄は面倒くさい部分もありますが、それも含めた温かさが感じられるところです。


ニシヅカ)人付き合いの距離感は、コロナで会いたくても会えない今こそ大切なのかなと思いながら聞いてました。

では、次に仕事についてのお聞かせください。

介護の現場は様々な方と協力しながらケアされると思いますが、その中で重要な部分や気を付けていることはなんですか。


香織さん)一番はコミュニケーションです。利用者さんや職員同士でも、まずは角が立たないように伝えるコミュニケーションを心掛けています。利用者さんの情報を職員同士で共有することも重要ですから、日頃から何気ないことでも共有することが仕事の上で大切だと感じています。


ニシヅカ)介護の仕事は体力的にハードなイメージが強いですが、どのような場面が大変ですか。


香織さん)勤めている特養(特別別養護老人ホーム)は寝たきりの方が多く、起こす寝かせるという動作だけでも体力を使います。入浴のためストレッチャーに移す場面でも力が必要になります。


所長)デイサービスやショートステイに比べると特養は力を使う場面が多そうですね。


香織さん)力の入れ加減が難しいという声を聞くこともあります。


所長)介護の現場では、働きながら資格取得を目指す人も多いと思いますが、実際の現場ではどのようになっていますか。


香織さん)私が勤めている施設では、資格を持たない職員に対して指導カリキュラムを設けています。カリキュラムでは、まず三ヶ月は先輩に付き添いながら、現場で働く上で必要な知識や技術を学びます。

資格がなくても介護の仕事を始めることはできますし、資格取得の際に必要な知識や技術を働きながら身に付けることができますので、介護の仕事に興味持ってくれる人が増えると嬉しいです。


ニシヅカ)卒業後、働きだされて想像していたイメージとのギャップを感じられたことはありましたか。


香織さん)ギャップを感じたのは就職後ではなく実習のときの方が多かったです。ですが、授業で事前に現場と座学とのギャップを勉強する時間がありましたので、ギャップを感じても驚きは少なかったです。


ニシヅカ)わたしは以前、介護施設で職場体験をした同級生の話を聞いたことがあります。そのとき、食事の介助では誤飲の可能性があり、自分たちはその体験をしなかったと聞きました。実際の現場では誤飲の他にはどのような部分に気を付けていますか。


香織さん)認知症の方もいらっしゃいますので、介助ではかなり神経を使います。例えば、現場では利用者さんが次にどのような行動をとるかを予測します。『少しそわそわした雰囲気なので御手洗に行きたいのかもしれない』『車椅子から自分で立ち上がろうとしている様子なので転んでしまうかもしれない』など想像して、先回りする仕事を心掛けています。

先程の職場体験の話は、おそらく職員は日頃、利用者さん一人ひとりとゆっくり座ってお話をする時間が取れないので、自分たちの代わりに利用者さんとお話をしてもらいたいという考えもあったのではないか思います。また、食事の介助は利用者さんが飲み込んだかどうかの見極めが難しいので、事故にならないよう体験に含まなかったのだと思います。



ニシヅカ)想像力や予測が必要になるとは意外でした。


香織さん)あと、利用者さんの生活パターンを掴んでおくことも大切です。私たちが朝起きたあと歯磨きをして朝ごはん食べてといったパターンがあるように、利用者さん一人ひとりの生活リズムに合わせてケアしていくことが大事になります。


ニシヅカ)行動を観察、予測しつつ、1人ひとりに合わせてケアをすることが凄いと思いました。


香織さん)私も最初からできた訳ではなく、働いていく中で先輩から教わりながら徐々に身に付けてきました。


ニシヅカ)私は飲食店でアルバイトをしていますので、伊藤さんのお話を踏まえて、観察することは様々な場面で大切だと気づきましたので早速試していきたいです。

これまでは、仕事について伺ってきましたが、今度はプライベートについての質問です。

ストレスの発散やリフレッシュはどのようにされてますか。


<第2話へつづく>


取材日:2022.03.04

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第2話は、仕事やストレスのリフレッシュの方法、介護の仕事の魅力ややりがい、香織さんの新たな人生の決断についてのお話をお届けします。

どうぞお楽しみに。



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